痛みを感じるメカニズム ~火災警報器と仕組みは一緒~

 手足をぶつけたり、ドアで手をはさんだり、指にトゲが刺さったり。
 日常生活で 「痛み」 を感じることは、大なり小なりよくある事かと思います。

 「痛み」 というのは、非常に不快な感覚です。
 しかし、痛みを感じることがなければ困ることもあります。

 痛みの本来の役割は、「身体の損傷」 を知らせる警告信号です。
 痛みを感じることで肉体の危機を察知し、危険から逃れるなど対処することが出来ます。

 もし痛みを感じなければ、大怪我をしても気づかず放置してしまい、命を失うことでしょう。

 では、私たちの身体は、どのようなメカニズムで痛みを感じるのでしょうか?

 痛みの第一歩は、「痛覚神経」の末端にある 「センサー(検知器)」 から始まります。
 身体のあちこちに存在するセンサーが、痛みを引き起こす刺激を検出します。
 検出された刺激は 「電気信号」 に変換され、痛覚神経を伝って 「脳」 へ送られます。

 送られた電気信号を 脳が 「意識」 することで、はじめて「痛み」を感じるのです。
 痛みを感じるのは 「脳」 なのです。(←ここ重要!)
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 痛みのメカニズムは、火災警報器と同じような仕組みです。

 火災警報器のセンサーは熱や煙を検知すると、電気信号を発生させます。
 その電気信号は電線(電子回路)を伝って、警報器に送られます。
 信号を受けとった警報器は、ベル音を鳴らして火災を知らせてくれるのです。

 →次記事:「痛みを引き起こす 『発痛物質』 ~トウガラシは辛くて痛い!~」


 オススメ文献
 『図解入門よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ』 伊藤和憲 秀和システム
 『痛みと鎮痛の基礎知識(上)基礎編』 小山なつ 技術評論社
 『痛みと鎮痛の基礎知識(下)臨床編』 小山なつ 技術評論社

痛みを引き起こす「発痛物質」 ~トウガラシは辛くて痛い!~

 痛みを引き起こす原因には、いろいろなものがあります。
 怪我、火傷(ヤケド)、肉体酷使、感染症、腫瘍などなど。

 これらの刺激により、身体が損傷し、細胞が破壊されるのです。
 目に見えない微小な損傷から、骨折などの大きな損傷まで、実に程度は様々です。

 細胞が破壊されると、それまで細胞の中にあった成分が漏出します。
 そして破壊された箇所を修復しようとして血液・白血球が集まり、炎症が生じます。

 漏出した細胞成分や炎症で生じる産物が、痛みを引き起こす 「発痛物質」 です。

 風邪でのどが痛いのは、のどの粘膜が炎症を起こして発痛物質が生じているからです。
 胃腸炎でお腹が痛いのも、炎症による発痛物質が痛みを引き起こしているです。

 発痛物質と言われてもピンと来ないので、発痛物質≒トウガラシ だと思ってください。
 トウガラシを触った手で目や鼻をこすると、めちゃくちゃ痛いですよね(涙)

 損傷・炎症で生じた発痛物質を、痛覚神経の末端にあるセンサーが検出します。
 検出された刺激は電気信号に変換され、痛覚神経を伝って脳へ送られ痛みを感じます。
 →前記事:「痛みを感じるメカニズム ~火災警報器と仕組みは一緒~」

 激しい運動、不慣れな作業のあとに生じる痛み、いわゆる筋肉痛も発痛物質が原因です。
 肉体の酷使で筋肉の細胞(筋線維)が破壊され、軽微な炎症が生じているのです。

 炎症・発痛物質による痛みを 「急性痛」 や 「炎症性疼痛」 と言います。
 このような痛みは、肉体のどこかが壊れているよ!という警告信号なのです。

 →次記事:「痛みの発生源はどこ? ~痛む場所が必ずしも悪いわけではない!~」

 オススメ文献
 『図解入門よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ』 伊藤和憲 秀和システム
 『痛みと鎮痛の基礎知識(上)基礎編』 小山なつ 技術評論社
 『痛みと鎮痛の基礎知識(下)臨床編』 小山なつ 技術評論社

痛みの発生源はどこ? ~痛む場所が必ずしも悪いわけではない!~

 身体が損傷すると細胞が壊れて炎症が起こり、「発痛物質」 が生じます。
 その発痛物質が痛覚神経の末端のセンサーを刺激して、脳に痛み信号を伝えます。
 痛み信号を受信した脳は、痛み感覚を生じさせて異常を知らせてくれるのです。
 →前記事:「痛みを引き起こす「発痛物質」 ~トウガラシは辛くて痛い!~」

 指先にトゲが刺さると、その指に鋭い痛みを感じます。
 その痛み感覚を手がかりに、刺さった極小のトゲを見つけることが出来ます。

 しかし、筋肉や内臓などの鈍い痛みは、なんとなくこのあたりが痛いかも?と曖昧です。
 胃痛で、胃の後壁の上部で直径1cmの範囲が痛い!と感じることは出来ませんよね(^^;

 実は、「痛みを感じる場所」 と 「痛みの発生源」 が一致しているとは限りません。
 むしろ 「痛い場所」 と 「傷んでいる場所」 が別の場所であることの方が多いです(約7割)。

 たとえば盲腸(虫垂炎)では、痛みが右下腹部ではなく、みぞおちの痛みとして感じたり、
 心筋梗塞では、胸ではなく喉や左肩・腕の痛みとして感じられることがあります。

 よくあるのが頭痛で、本当は首や肩の筋肉の痛みが正体なのです。
 お尻の筋肉が脚の痛みとして、太ももの筋肉が膝の痛みとして感じることもあります。

 このような 「痛みの発生源」 が 「痛みの現場」 と異なる痛みを 「関連痛」 と言います。
 痛み刺激を受信した脳が痛みの発信源を誤って、別の場所に痛み感覚を生じさせるのです。

 脳は、勘違いや錯覚をよく起こします(^^;
 もし痛みを感じる場所を押したり揉んだりして治ったとしたら、それはラッキーです。

 首や肩・足腰など、痛みを感じる場所を治療しても改善が得られないことが多々あります。
 そんな痛みの発生源は、内臓や別の離れた場所にある筋肉のトラブルかもしれません。

 →次記事:「どこが痛いか分からない ~筋肉の痛み・内臓の痛みの見分け方~」

 オススメ文献
 『図解入門よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ』 伊藤和憲 秀和システム

どこが痛いか分からない鈍い痛み ~筋肉の痛み・内臓の痛みの見分け方~

 筋肉や内臓の痛みは重いような鈍い痛みで、痛みを感じる場所がはっきりしないものです。
 しかも、「痛みの発生源」 と 「痛みを感じる場所」 が異なる 「関連痛」 の可能性も高いです。
 →前記事:「痛みの発生源はどこ? ~痛む場所が必ずしも悪いわけではない!~」

 内臓の痛みは病院の検査で異常が発見される前から感じることがあります。
 未だ大きな病気には至らない 「未病(みびょう)」 の段階から痛みは感じるのです。
 病院で異常なしと言われても、その痛みが内臓のトラブルでは無いとは言い切れません。

 痛みの発生源が、筋肉か内臓なのかを、おおよそ見当をつける方法があります。
 
 筋肉の痛みは、身体の動き伴って痛みが増悪・軽減するなど変化します。
 たとえば腰を曲げると痛みが強くなるけど、仰向けで寝ると痛くない腰痛や、
 膝痛で膝を曲げると痛いけど伸ばすのはOK!など動作によって痛みが増減します。

 辛い動作、ラクな姿勢があるのが筋肉の痛みの特徴です。
 身体を動かして筋肉が伸び縮みすることで、筋肉への負荷が変化するからです。

 しかし内臓からの痛みは、動作や姿勢に伴って痛みはとくに変化はありません。
 内臓そのものが悪いので、身体を動かしたところで内臓の状態は変わらないからです。

 楽な姿勢がない・何をしても痛いとき、それは内臓の痛みかもしれません。

 腰痛が腎臓や婦人科のトラブルが原因であったり、肩の痛みが肝臓病の症状だったりします。
 痛みを感じたら、まずは内臓の病気が潜んでいないか調べてもらってください。

 オススメ文献
 『図解入門よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ』 伊藤和憲 秀和システム

神経の圧迫で痛みが!? ~頚椎症・腰椎症・椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症~

 首や腕、腰や足の痛みで病院を受診すると、レントゲンやMRIなどの画像検査をされます。
 その結果、背骨の変形や椎間板ヘルニアが見つかると、痛みの原因はそれだと言われます。

 「変形した骨やヘルニアが神経を圧迫しているので痛みが生じているのです。」
 「痛みの原因は神経の圧迫だから、牽引をしてダメなら手術をしましょう。」
 たいていは、このように言われるかと思われます。

 しかし! 実は、神経は圧迫されても、痛みが生じることはありません!
 痛覚神経は、痛み刺激を脳に伝える電線のようなものです。
 →記事:「痛みを感じるメカニズム ~火災警報器と仕組みは一緒~」

 神経は頑丈に出来ており、少々の圧迫では何の問題も起きません。
 立っていると足の裏の神経は体重で圧迫されますが、足の裏は痛くなりませんよね。

 もし神経が極度に圧迫されると 「麻痺(マヒ)」 が生じます。

 痛覚神経が麻痺すると、つねっても叩いても痛みを感じなくなってしまいます。
 運動神経に麻痺が起きると、筋肉が動かなく、身体を動かせなくなりますます。

 腕枕をしながら寝てしまうと、腕の感覚が無くなったり、動かなくなることがあります。
 神経が圧迫された結果、感覚神経や運動神経が麻痺を起こしてしまうのです。

 圧迫されると麻痺が生じるのに、真逆の痛みを感じるという説明はおかしいですよね(^^;

 「本物」 の神経圧迫による病気に、たとえば「後縦靱帯骨化症」という難病があります。
 神経の圧迫が進行すると手足が麻痺したり、排尿・排便が困難になってしまいます。

 頚椎症・腰椎症・椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症と診断されて痛みでお困りのあなた!
 そもそも神経の圧迫は痛みの原因ではないので、手術で圧迫を解除しても治りません。
 その痛みは、「筋肉の痛み」なのです。

 →次カテゴリ:「筋肉の痛み・MPS」

筋肉痛のメカニズム ~炎症・発痛物質が痛覚神経を刺激する~

 筋肉の痛みと聞いてすぐに思いつくのは、「筋肉痛」 です。
 激しい運動をした後に襲って来る、あの痛みです。

 筋肉痛は、筋肉に対して過大な負荷が加わることが原因です。
 筋肉は使い過ぎると筋肉の細胞(筋線維)が壊れてしまうのです。

 肉離れなどの大きなケガでなくても、筋肉を酷使すると微小な損傷が生じます。
 傷ついた筋肉を修復しようと多量の血液(白血球など)が集まり、炎症が起こります。
 炎症が起こる際に発痛物質が生じ、それが痛みを引き起こす刺激になります。
 →記事:「痛みを引き起こす『発痛物質』 ~トウガラシは辛くて痛い!~」

 筋肉痛のキッカケは、激しい運動やスポーツだけではありません。

 転倒や交通事故など、自分の意志に反して強い力が外から加わることや
 行楽や日曜大工など、不慣れな運動・作業も筋肉を傷める原因になります。

 また、筋肉を強く押したり揉んだりすることも痛みのキッカケになります。
 食肉であれば叩いたり揉んだりすると筋が切れて柔らかく美味しくなります。
 しかし生きた人間の筋肉が傷つくと、炎症(もみ返し・もみ起こし)が生じます。

 ちなみに筋肉痛って、運動をした数日後に起こりますよね(^^?
 そのタイムラグは、筋肉を損傷してから修復が進むまでの時間差だそうです。

 筋肉の炎症・修復が終わると、壊れる前の筋肉よりも太く大きくなります。
 筋トレで筋肉が肥大するのは、この破壊と修復のメカニズムを利用したものです。
 わざと筋肉痛が起こるくらい運動しないと、筋肉は強くならないのですね(^^;

 →次記事:「筋肉のコリと痛み ~硬くなった筋肉は痛みの予備軍~」

筋肉のコリと痛み ~硬くなった筋肉は痛みの予備軍~

 筋肉は縮んだり・ゆるんだり、収縮と弛緩をすることで、骨・関節を動かしています。
 スムーズに動けるのは、いくつもの筋肉が協調・連動して収縮・弛緩するおかげです。

 筋肉の柔軟性が低下して十分に収縮・弛緩できなくなった状態が 「コリ」 です。
 コリは筋肉が硬くなっている状態です。

 筋肉が凝ってくると、つっぱり感、締め付けられ感、重だるさなどの症状が出てきます。
 筋肉がうまく収縮・弛緩しづらくなるので、関節を動かせる範囲が狭まってきます。
 肩こりでは肩や首が動かせにくくなったり、肩が詰まる感じや重苦しくなったりします。

 実は、筋肉のコリ自体は痛みの原因ではありません。
 たとえ筋肉が硬く凝っていても、痛みも何も感じない、無症状の人もいます。

 しかし柔軟性が低下して硬くなっている筋肉は、痛みの予備軍になります。
 硬い筋肉を無理やり動かすと、筋肉に過負荷が加わって痛みを発します。

 ストレッチをすると、筋肉が突っ張って軽い痛みを感じますよね。
 このまま引き伸ばされたら筋肉が切れるかも…という損傷に対する警告反応です。
 →記事:「痛みを感じるメカニズム ~火災警報器と仕組みは一緒~」

 筋肉は身体を動かすことなく、じっとしていると柔軟性が低下していきます。
 同じ姿勢をし続けるなど、運動不足によって筋肉は硬く凝ってくるのです。

 筋肉のコリは、運動不足になりがちな現代の様々な生活場面で発生します。

 PC・スマホを見続けることは、首や肩の筋肉のコリを招きます。
 デスクワークなど長時間座り続けると、腰や股関節、脚の筋肉が硬くなってきます。

 硬くなった筋肉は無理に動かすと痛く、動かさないと痛くありません。
 しかし痛みを恐れて動かさないでいると、さら硬くなる…悪循環に陥りがちです。

 寝起きの動きはじめが痛いのは、長時間の安静で筋肉が硬くなっているからです。
 痛いながらも動いていると徐々に筋肉の柔軟性が戻って、痛みが引いてきます。

 筋肉の痛みを治すには、無理のない範囲で徐々に動かしていくことが重要です。

 →次記事:「筋肉とむくみ ~筋肉は血液・リンパ液の還流を促すポンプ~」

筋肉とむくみ ~筋肉は血液・リンパ液の還流を促すポンプ~

 立ち仕事や座りっぱなしが続くと、だんだんと足が浮腫んでくる…。
 足がむくむと靴下のゴム跡がついたり、靴やブーツが窮屈になってきます。

 そんなむくみは、血液中の水分(間質液・リンパ)の流れが滞り溜まっている状態です。

 心臓から押し出された血液は、動脈・毛細血管を通って全身に送られます。
 酸素や栄養に富んだ血液中の水分が毛細血管から染み出て細胞に届けられます。
 染み出た水分・リンパ液は、9割が静脈、1割がリンパ管に入って心臓へ戻ります。

 心臓には血液を全身に送り出すポンプの役割があります。
 しかしながら、隅々に行き渡った血液・リンパ液を汲み上げるだけの力はありません。
 血液・リンパ液を心臓に戻すポンプの役割は、「筋肉」が担っているのです。

 身体を動かすことで、筋肉は収縮・弛緩を繰り返します。
 筋肉の収縮・弛緩で静脈・リンパ管が刺激され、血液・リンパ液の流れが促されます。
 収縮・弛緩を繰り返す筋肉がポンプのように血液・リンパ液を心臓に送っているのです。

 ところが、身体をあまり動かさないでいると、筋肉のポンプ作用が十分に働かなくなります。
 静脈・リンパ管の流れが悪くなり、毛細血管から染み出たリンパ液が滞留してしまいます。

 流れることが出来ず滞留してしまったリンパ液が、浮腫(むくみ)の正体です。
 滞留したリンパ液が、筋肉や皮膚の細胞の隙間にあふれている状態が浮腫なのです。

 とくに足のリンパは重力に逆らって心臓に戻らなければならないので滞留しがちです。
 立ち仕事や座業で足の動きが少ないと、足の筋ポンプ作用が低下して浮腫んできます。

 また、筋肉が硬く凝っている場合も、筋肉のポンプ機能が低下して浮腫んできます。
 筋肉が十分に収縮・弛緩せず、静脈・リンパ管への刺激が弱まってしまうからです。
 →前記事:「筋肉のコリと痛み ~硬くなった筋肉は痛みの予備軍~」

筋・筋膜性疼痛症候群(MPS) ~慢性痛になりやすい筋肉の痛み~

 骨折や感染症、腫瘍、痛風、リウマチなどの病気でない場合、
 首や肩、膝や足腰などに感じる痛みは 「筋肉の痛み」 です。
 たとえ 「骨の変形」・「神経の圧迫」 が見つかっても、痛みの原因ではありません。

 誰しも加齢とともに骨は変形するもので、変形は痛みが出る前から起きています。
 私も頚椎が変形して神経を圧迫しているそうですが、痛くも痒くもありません(^^♪
 そもそも、神経が圧迫されていても、痛みを感じることはありえません。
 →記事:「神経の圧迫で痛みが!?~頚椎症・腰椎症・椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症~」

 あなたの痛みが筋肉の痛みかどうか、自分で確かめられる方法があります。

 痛い動作・姿勢をしながら、痛む部位の周辺を広くあちこち指で押さえてください。
 苦痛を感じる点、いつもの痛みが増悪する点があれば、そこが痛みの原因です。
 →記事:「筋肉痛のメカニズム ~炎症・発痛物質が痛覚神経を刺激する~」
 →記事:「筋肉のコリと痛み ~硬くなった筋肉は痛みの予備軍~」

 触診すれば分かるのに、画像検査ばかりで患者さんの身体を触らない。
 画像や数値という客観的なものばかりを判断材料にするという教育の問題か、
 検査をしないと診療報酬を得られないという医療制度の問題かもしれません。

 検査で異常があれば、骨を削ったり、神経の圧迫を解除する手術を勧められ
 もし異常が無ければ、痛みは 「気のせい」・「精神的なもの」 だと言われます。
 いずれにせよ、適切な治療を受けられず、痛みがこじれて慢性化して行きます。

 また、痛みを感じ続けると精神的にも参ってきて、不眠や抑うつなどの症状や
 自律神経を介して、食欲不振や便秘など新たな身体症状が引き起こされます。
 →カテゴリ:「ストレスと自律神経」

 そんな筋肉の痛みを発端とする様々な症状を 「筋・筋膜性疼痛症候群」(MPS) と言います。
 「痛み」 だけでなく、「シビレ」などの異常感覚を生じさせることがあります。

  →カテゴリ:「ストップ!慢性痛」

慢性痛は脳の誤作動 ~原因がなくても脳が痛み感覚を生じさせる~

 「慢性痛」 という病気をご存じでしょうか?

 痛みの本来の役割は、「身体の損傷」 を知らせてくれる警告信号です。
 私たちは痛みを感じることで、身体に異常が起きたことを知ることが出来ます。
 →カテゴリ:「痛みのメカニズム」

 「身体の損傷」 を知らせる痛みは、「急性痛」 と呼ばれる痛みです。
 痛みを感じなければ身体の損傷に気づかず、手遅れで命を失うかもしれません。
 急性痛は肉体の異常を警告してくれる必要な痛みです。

 傷が癒えれば痛みも治まる。
 それが当然だと思いきや、必ずしもそうとは限りません。
 骨折や捻挫・肉離れなどのケガ・損傷が完治した後でも痛みだけが残ることがあります。

 そもそも痛みの原因となる損傷が無くても、痛みを感じる病気があります。
 原因のない痛み。それが 「慢性痛」 です。

 慢性痛は、急性痛の状態がただ単に長引いているだけではありません。
 身体のどこかが悪いから痛いのではなく 「痛いという病気」 です。

 慢性痛は、もはや警告信号としての役割が無い、全く無意味で不必要な痛みです。
 火事が起きてなくても火災警報器が鳴り続いているような誤作動の状態です。
 肉体に異常がなくても、脳が痛み感覚を生じさせてしまうのが慢性痛なのです。

 急性痛の発症から数ヶ月、激痛では数日で、慢性痛になるおそれがあります。
 慢性痛になると、肉体的・精神的にも生活の質が著しく損なわれるようになります。

 慢性痛は、レントゲンやMRI、血液検査などでは分からない症状です。
 身体の損傷であれば画像で発見できますが、そもそも痛みは目に見えません。
 異常なしと診断され、痛みは「心因性」・「精神的なもの」 と誤解されることがあります。

 あなたが感じる慢性痛は、心の病ではありません。

 慢性痛を治すには、「なぜ痛みが続くのか」 を理解する必要があります。
 →次記事:「慢性痛は痛覚過敏症 ~痛くないハズの刺激でも痛い!~」

慢性痛は痛覚過敏症 ~痛くないハズの刺激でも痛い!~

 身体に損傷がなくても感じてしまう不必要な痛みが 「慢性痛」 です。
 痛みを放置すると数ヶ月で、激しい痛みなら数日で慢性痛になると言われています。
 →前記事:「慢性痛は脳の誤作動 ~異常がなくても脳が痛み感覚を生じさせる~」

 なぜ痛みは慢性痛と化してしまうのでしょうか?
 
 痛みが長引くと、痛み検出器が過敏になってきます。(末梢性感作)
 痛み検出センサーの数が増えたり、痛覚神経が皮膚表面にまで伸びてきます。
 すると、通常ならば痛みを感じないような刺激でも、敏感に検出するようになります。

 軽く触れる・押さえる・冷える などの刺激でも、痛み刺激として検出してしまいます。
 イスに座るだけで痛かったり、衣服と擦れるだけでも痛みを感じるようになります。
 いわば、線香の火に反応して火災警報器が鳴ってしまうような誤作動の状態です。

 また、痛みが長引いてるうちに、神経や脳も過敏になってきます。(中枢性感作)
 痛み信号を繰り返し受け続けると、神経と脳のつながりが強化されていきます。
 すると、わずかな痛み刺激でもすぐに脳に伝わるようになり、痛みを感じやすくなります。
 
 毎日毎日同じことをし続けると、やがてそれが身について習慣になるとの同じです。
 痛みを感じつづけることで、脳や神経が痛みを学習・記憶してしまうのです。

 痛みを生じさせるのが脳であれば、痛みを抑えるのも脳のはたらきです。
 もともと脳には痛みを抑えるはたらきも備わっています。(下行性疼痛抑制系)
 慢性痛では、そのはたらきが弱って、痛みを抑えきれなくなっています。 

 慢性痛は痛みを感じやすくなってしまっている状態、痛覚過敏症です。
 痛みを感じるメカニズム、痛み認知システムの異常・誤作動なのです。 

 慢性痛は手術で悪いところを摘出・修復すれば治る病気ではありません。
 肉体の損傷が原因ではなく、痛みを感じるはたらきの異常だからです。
 ハードウェア(構造物)の故障ではなく、ソフトウェア(機能)の障害なのです。

 →次記事:「痛みが広がる慢性痛 ~痛みを伝える神経のバトンミス~」

痛みが広がる慢性痛 ~痛みを伝える神経のバトンミス~

 指を切ったら、患部の傷口が痛い。
 ケガによる痛みは、損傷した場所だけが痛いハズです。

 しかし慢性痛になると、痛みの範囲が広がったり、反対側も痛くなることがあります。
 最初は腰だけが痛かったのが、いつのまにか脚にも痛みが広がってきます。
 右脚だけが痛かったはずが、今度は左脚にも痛みが出てくることがあります。

 痛み刺激を伝える神経は、1本の神経で直接 脳につながっているワケではありません。
 数本の神経が脊髄や脳内で リレー中継をしながら、痛みの信号を脳に届けています。

 ところがバトンタッチの際に、誤って別コースの神経にバトンを渡すことがあります。
 指の痛みを伝える神経が、隣の腕の痛みを伝える神経にバトンタッチするようなミスです。
 すると脳は、腕から痛み信号が来たと誤解して、腕にも痛み感覚を生じさせるのです。

 痛む範囲が拡大するのは、脳に痛みを伝える神経のバトンミスが原因です。(グリア細胞)
 痛みを伝える中継ぎで混線してしまい、近隣周辺にも痛みを感じさせてしまうのです。

 そして痛みを感じると、痛む周辺の筋肉が無意識に反射的に硬く緊張します。
 筋肉を鎧のようにガチガチに固めることで、身を守ろうとする防御反応です。

 筋肉が硬く緊張すると、うまく収縮・弛緩することが出来なくなります。
 硬くなった筋肉への血行が悪くなって酸欠を起こし、発痛物質が生成・蓄積されます。
 また柔軟性が乏しい筋肉を動かすと、筋肉が引っ張られて、つっぱり感や痛みを生じます。

 痛みが続くと神経の混線や筋肉の防御反応で、ますます痛みが広がってしまうのです。

 →次記事:「痛みが移動する?? ~痛み感覚は脳の気の向くまま・勝手気まま~」

痛みが移動する?? ~痛み感覚は脳の気の向くまま・勝手気まま~

 慢性痛では、痛みを感じる場所がただ1ヶ所だけに留まることは稀です。
 痛みの範囲が広く、複数の場所に痛みを訴えることがほとんどです。
 →前記事:「痛みが広がる慢性痛 ~痛みを伝える神経のバトンミス~」

 それらの痛みも、そのときどきで痛む場所が変わることがあります。
 さっきまではそこが痛かった。今はこっちが痛い。
 きのうは右膝が痛かった、今日は左膝が痛い。

 それは痛みが移動したのでも無ければ、新たに痛みが発生したワケでもありません。
 身体の複数の部位に痛みがあるとき、最も強い痛みの部位をだけを感じます。
 そして、ほかの2番目・3番目に強い痛みは感じにくくなります。

 たとえば、身体どこかが痛むとき、他の場所を出来るだけ強く痛めつけて下さい。
 その痛みを感じている間は、元の痛みを忘れているはずです(^^;

 そんな荒業をしなくても、痛みを感じない時間が、あなたにもきっとあります。
 趣味に没頭しているときや、何かに集中しているときは、痛みは気にならないハズです。
 救急車のサイレンが聞こえたら、気を取られているその瞬間は痛みを忘れますよね。

 痛みは脳が生じさせる感覚です。脳のはたらきの産物が痛みです。
 脳はあらゆる情報の中で、脳にとって一番気になることを意識に上らせるのです。
 痛みという感覚も、あなたの脳がそのときどきで気になる場所に発生させるのです。

 身体の損傷である骨折は、寝ても覚めても骨折という状態は急に変化しません。
 しかし骨折による痛みは、睡眠中など意識が逸れているときは痛みは変化(消失)します。

 骨折は整復・固定などの治療をすれば、やがて治っていくことでしょう。
 しかし慢性痛の場合、身体の損傷など修復させるべき原因・異常はありません。

 慢性痛は、痛みを感じる脳・神経のはたらき・痛み認知システムの誤作動なのです。
 脳に痛みを感じさせない・痛みに気を取られないことが慢性痛の治療になります。
 慢性痛の治療には、痛み感覚を発生させる脳の治療も必要なのです。

 →次記事:「慢性痛の薬物治療 ~過剰な痛みを発生させる脳・神経への薬~」

慢性痛の薬物治療 ~過剰な痛みを発生させる脳・神経への薬~

 慢性的な身体の痛みは、最初は肉体の損傷がキッカケだったのかもしれません。
 外力や酷使で筋肉・骨などを傷めると、細胞が壊れて発痛・炎症物質が生じます。
 →記事「痛みを引き起こす「発痛物質」 ~トウガラシは辛くて痛い!~」

 急性痛と呼ばれる肉体の損傷による痛みには、消炎鎮痛剤(NSAIDs)が有効です。
 バファリン® ロキソニン® ボルタレン® カロナール® などの薬があります。

 しかし慢性痛になると、これらの消炎鎮痛剤が効かなくなります。
 慢性痛は、損傷・炎症などの原因が無くても痛みを感じる病気だからです。
 痛み信号を伝える神経や痛みを感じる脳の誤作動が慢性痛の原因なのです。
 →記事:「慢性痛は脳の誤作動 ~原因がなくても脳が痛み感覚を生じさせる~」

 そのような慢性痛の薬物療法は、神経や脳に作用する薬が中心となってきます。

 痛覚神経は、数本の神経がバトンリレーをしながら脳に痛み信号を伝えています。
 このバトンタッチを邪魔すると、痛み信号が脳に伝わらなくなり、痛みが鎮まります。
 このような作用をする薬には、リリカ® ガバペン® などの薬があります。

 また、もともと脳には痛みを抑える仕組みも備わっています(下行性疼痛抑制系)。
 このはたらきが弱くなると痛みを制御できなくなり、痛みを感じやすくなります。

 下行性疼痛抑制系を活性化させる物質は、セロトニンやノルアドレナリンです。
 このセロトニンやノルアドレナリンのはたらきが高まると、痛みを感じにくくなります。

 サインバルタ® トレドミン® パキシル® ジェイゾロフト® などのいわゆる抗うつ剤です。
 そのほかにも、ノイロトロピン® トリプタノール® などの薬も痛みを感じにくくさせます。

 また、痛覚神経のリレー中継を邪魔したり、下行性疼痛抑制系のはたらきを高めて、
 強力に痛みを抑える薬には、トラマール® などの麻薬性鎮痛薬があります。

 実は身体が正常でも、特定の脳細胞に直接 電気を流すと、身体に痛みが生じます。
 脳の痛み発生細胞のスイッチがオンになると、身体に痛み感覚が発生するのです。
 これを逆手にとって、脳細胞をオンにさせなければ、痛みを止めることが出来ます。 
 脳を興奮させないようにする薬には、ガバペン® などの抗てんかん薬があります。

 慢性痛の場合、痛みを止めること自体が、根本的な治療につながるのです。
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はりきゅう中村@大阪

Author:はりきゅう中村@大阪

 心身相関の考えから、身体の健康とメンタルヘルスに取り組んでいます。より簡単・安全で、より効果的なセルフケア(家庭治療)を紹介しています。
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