慢性的な身体の痛みは、最初は肉体の損傷がキッカケだったのかもしれません。
外力や酷使で筋肉・骨などを傷めると、細胞が壊れて発痛・炎症物質が生じます。
→記事「痛みを引き起こす「発痛物質」 ~トウガラシは辛くて痛い!~」 急性痛と呼ばれる肉体の損傷による痛みには、消炎鎮痛剤(NSAIDs)が有効です。
バファリン® ロキソニン® ボルタレン® カロナール® などの薬があります。
しかし慢性痛になると、これらの消炎鎮痛剤が効かなくなります。
慢性痛は、損傷・炎症などの原因が無くても痛みを感じる病気だからです。
痛み信号を伝える神経や痛みを感じる脳の誤作動が慢性痛の原因なのです。
→記事:「慢性痛は脳の誤作動 ~原因がなくても脳が痛み感覚を生じさせる~」 そのような慢性痛の薬物療法は、神経や脳に作用する薬が中心となってきます。
痛覚神経は、数本の神経がバトンリレーをしながら脳に痛み信号を伝えています。
このバトンタッチを邪魔すると、痛み信号が脳に伝わらなくなり、痛みが鎮まります。
このような作用をする薬には、リリカ® ガバペン® などの薬があります。
また、もともと脳には痛みを抑える仕組みも備わっています(下行性疼痛抑制系)。
このはたらきが弱くなると痛みを制御できなくなり、痛みを感じやすくなります。
下行性疼痛抑制系を活性化させる物質は、セロトニンやノルアドレナリンです。
このセロトニンやノルアドレナリンのはたらきが高まると、痛みを感じにくくなります。
サインバルタ® トレドミン® パキシル® ジェイゾロフト® などのいわゆる抗うつ剤です。
そのほかにも、ノイロトロピン® トリプタノール® などの薬も痛みを感じにくくさせます。
また、痛覚神経のリレー中継を邪魔したり、下行性疼痛抑制系のはたらきを高めて、
強力に痛みを抑える薬には、トラマール® などの麻薬性鎮痛薬があります。
実は身体が正常でも、特定の脳細胞に直接 電気を流すと、身体に痛みが生じます。
脳の痛み発生細胞のスイッチがオンになると、身体に痛み感覚が発生するのです。
これを逆手にとって、脳細胞をオンにさせなければ、痛みを止めることが出来ます。
脳を興奮させないようにする薬には、ガバペン® などの抗てんかん薬があります。
慢性痛の場合、痛みを止めること自体が、根本的な治療につながるのです。